2017.08.31,

仕事一筋17年の父が離婚危機を経て気づいた4つのこと -前編-

自分と向き合い、“思い込み” や “囚われ” から解放――
時間をかけて互いを認められるようになった

小山:そんな河本さんには耳の痛い話かもしれませんが、今の子育て世代、特に30代の女性は夫婦関係の “満足度” が急落しているんです(※2)。夫に対して「理解してくれない」「何もやってくれない」などと不満を募らせている人のなんと多いことか。

河本:はい……耳が痛い話ですね。まぁ、夫側にもいろいろ思うところはあるでしょうし。

小山:共働きが一般的になり、家事や子育ての負担を分け合う風潮が強まるなかで、夫への “期待値” が高まっていることがその要因だと思うんです。理想と現実のギャップがあまりにも大きく、それが「うちの夫は〜してくれない」というイライラにつながっている。妻たちの愚痴は、リアルでもネットでも溢れています。

河本:働くママはみなさん、頑張っていますからね。でも、それを承知であえて言わせてもらえば、愚痴からは何も生まれないのですよ。 “負の感情” は極めて表面的というか、自分の本心に自分でも気づかないまま負の感情だけを相手にぶつけているケースも多いと思うんです。

小山:分かるような、分からないような……。

河本:一方的に相手を評価するのは簡単だけど、それを繰り返していても平行線になるということです。私たち夫婦も関係性の悪化が表面化したとき、妻は「なんで〜してくれないのよ、この人は。意味が分からない」という感じで、私も「気持ちは分かるけど、こっちにもこっちの事情があるし……」と互いに平行線でした。これって、今思うと相手に対して「こういうところがよくない」と一方的に “評価” しているだけなんですね。

小山:なるほど、 “評価” ですか。

河本:なぜイラっとしてしまうのか、自分の価値観の根っこの部分をちゃんと理解しないまま相手に感情だけをぶつけている。もしかしたら本当の原因は相手にあるのではなく、自分にあるのかもしれないということです。自分の本当の気持ちを自分で把握できていないまま相手にどうのこうの言っているうちは何も変わらない。平行線なんです。

小山:とすると、相手に向き合う前に “自分に向き合う” 必要がある、ということになりますか?

河本:はい。私たち夫婦も、関係が回復した背景には、自分に向き合う時間がありました。自分に向き合って、初めて自分には “思い込み” や “囚われ” があった、ということに気付いてね。

小山:“思い込み”というのは、先ほどおっしゃっていた “子育ては母親がやるべき” みたいな先入観ですか?

河本:それもありますね。妻は、私に期待することをやめたとき、「自分は果たしてどんな人生を歩みたかったのか」を問うような学びの場を得ていました。そこで、不仲だった実の両親に対して彼女自身が長年引きずっていた感情や、それが原因でどこかで自分にブレーキをかけ枠をはめてしまっていたことに気づき、自分を解放したというか、ふっ切れたようです。私は私でCFCの学びの中で、自分の親と無意識にとっていた距離について考える機会があり、自分と親を客観的に見れるようになって、「あ、そうか。こう思い込んでいたな」と。お互いその囚われを手放して、初めて相手を認められるようになったと思うんです。

小山: 自分の生い立ちを整理することで自分らしさや自分の価値観を知る。確かにとても大事なことですよね。夫婦といえど元は他人なわけですから。

河本: 育つ過程の影響は結構大きいんですよね。本人は無自覚なことが多いのですが。そんなことを、場所は違えど同じ時期に私も妻も互いに学び、自分に向き合っていて。ものすごくシンクロしていたんですよ、その時。心の距離は離れていたけれど、お互い一生懸命自分に向き合っていた。不思議ですけどね。

小山: 河本さんにとっては子育て学を学んだことも自分と向き合う場所の一つだったのですね! ちなみに、そこでの内省を経て、ご自身の生活面に何か変化がありましたか?

河本:はい。たとえば、家事への向き合い方が変わりましたね。それまでも洗濯やごみ捨てをやっていなかったわけではないんですが、何というか “やってあげてる” が前提だったと思います。でも、学びを深めるうちに、家族をつくるために「自分ができることをやりたい!」と、自然に思うようになったんです。なので、洗濯ものを干すという行動一つにしても、以前は干し方について注意されるとムカついていたんですが、それからは素直に受け止められるようになりました。

小山: えー! いきなりすごい変化じゃないですか。

河本: 特に感謝されなくても “自分がやりたいからやっている” という感覚になりましたからね。小さなことですが、自分で考えて自分で動くということ。当たり前のことかもしれませんが、ようやくそんな状況になれたという感じです。

小山: 河本さんのBeforeAfterを垣間見ました!

河本: とはいえ、悪化している妻との関係はすぐには変わらないので、妻もそんな私を見て「私と離婚してもこの人は一人で暮らしていけそうだ。よかったね」と、他人事に思っていたようですけどね……(苦笑)。

小山: (苦笑)。本当、信頼関係は一朝一夕にできるものじゃないですからね。勉強になります。

(※2) 2017年7月 リクルートマーケティング『夫婦関係と家事に関する調査』。20代〜60代までの既婚者の7割近くが夫婦関係に満足しているものの、30代女性のみ、2015年度の調査を2ポイント下回っている。共働きが一般的になるなか、家事や子育ての分担に対する期待と現実のギャップが浮き彫りになる結果となっている。

自身の離婚危機を経てファミリービルディング・子育ての専門家としてご活躍中の河本氏。前半はご自身の経験を振り返り、相手に向き合う前に「自分に向き合う」というキーワードが出てきました。後半では自分たちらしい家族のカタチをつくるための4つのポイントについて掘り下げていきます!

Posted by Yamada Ikuko

編集&ライター業のママフリーランス。会社員の夫とともに「わが家らしい共働きスタイルってなんだろう?」と日々模索中。
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