2019.08.22,

ビジョンに共感し集まったメンバーと創る、多様で新しい働き方| 株式会社Waris 共同代表 田中美和さん

企業インタビュー、vol.1は、株式会社Waris(ワリス)様を取材しました。社会情勢の変化に伴い、働く個人にとって「多様な働き方の選択」が身近な時代になり、企業もまた複業の解禁など働き方改革が進められています。フリーランス人材や離職女性と企業のマッチングを行うWarisの田中美和さんに、多様な働き方の推進や、どこよりも多様な働き方を実践するWarisのワークスタイルについてお話を伺いました。【小山佐知子】

田中 美和さん プロフィール
1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として雑誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント株式会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス/複業/女性のキャリア/ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。2018年に出産し1児の母。

 

企業も個人も “サスティナブルに働く” を考えはじめている

新しい働き方を創ることへの同社の強い想いと使命感が伝わってくる


—今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます!多様な働き方を推進する企業の取材をしようと考えたとき、実はまず真っ先に候補に上がったのが
Warisさんでした。御社はフリーランス女性や離職経験のある女性にとって本当に強い味方だなと感じています。

 

田中美和さん(以下田中):わ〜、ありがとうございます!そんな風に言っていただけて私も嬉しいです。簡単に事業紹介になりますが、弊社は人材マッチング領域で大きく2つの事業を行っています。一つは人事や広報・マーケなどのビジネス系職種に特化したフリーランス女性と企業とのマッチング「Warisプロフェッショナル事業」。もう一つは離職中の女性の再就職支援「Warisワークアゲイン事業」です。どちらの事業も、女性がもっと柔軟に働き活躍できる社会にしたいという想いで立ち上げました。

 

—御社は3人の女性が共同創業者・代表者を務めていらっしゃいますが、これって珍しいですよね?

 

田中:確かに珍しいかもしれませんね。当社は、私と米倉、河の3人で立ち上げた会社です。私は起業する前、「日経ウーマン」の記者をしていて、取材を通して女性特有のライフキャリアの悩みにたくさん触れてきました。「女性が生き生きと働き続けるためのサポートがしたい」と強く思ったとき、たまたまご縁があって出会ったのが河と米倉でした。

 

—素敵なボードメンバーですね。現在はそれぞれ物理的に離れた形でお仕事なさっているようですが、これもまたユニークだなと。


田中:
「リモート経営」と呼んでいます。米倉は現在、パートナーの海外赴任の帯同でベトナムのホーチミンに、河もパートナーと共に移住し、福岡を拠点にしています。物理的には離れていますが密なコミュニケーションを取りながら以前と変わらず一緒に働いています。「多様で新しい働き方を創ろう」とビジョンを掲げるからには、私たち自身がどこよりも柔軟に働けなくてはと思い、弊社ではボードメンバーだけでなく、社員もまたリモートワークが中心なんです。

 

—とても興味深いです! 御社の働き方については後ほどじっくり伺うとして…まずお聞きしたいのですが、田中さんはメディアの取材を受けたり講演などにご登壇されることも多いと思うのですが、トレンドといいますか、よく聞かれることや傾向みたいなものはあるのでしょうか?

 

田中:傾向はありますね!以前は、世の中的にビジネス系フリーランスがまだ珍しかったこともあって「どんな働き方なんですか?」といったご質問が多かったのですが、最近は「フリーランスという働き方がある」という前提で  “サスティナブルな働き方” や “SDGs”、“女性の再就職” といった切り口で登壇のご依頼をいただくことが多いですね。個人の方からも「フリーランスになるために会社員時代にどんなことをしておけばいいですか?」など、具体的なご相談をいただくことが増えました。


—まさに時代の変化ですよね。労働人口がどんどん減って、年金ももらえるかわからなくて、何より長寿化で
70歳を超えてまで働くことを考えれば既存の働き方では無理が生じますもんね…

 

田中:弊社が創業した2013年はまだ「働き方改革」という言葉もありませんでしたからね。当時はちょうどリンダ・グラットン氏の『ワーク・シフト』が話題になっていたころで、働き方の多様性に社会の関心が集まり始めていました。大きな変化があったのは2016年に『ライフ・シフト』が発売され大ヒットし、「人生100年時代」という言葉が浸透してきたころからかなと。これまでよりずっと長い期間働くことになると考えたときに、いかに自分らしくライフステージを経ながらサスティナブルに働き続けるのかといったことを多くの方が気にし始めました。個人はもちろん、人材不足が深刻化する企業側も危機感が芽生え始めたように思います。

 

—いま「個人」と「企業」とお話がありましたが、“サスティナビリティ” を考えたときに、どちらのほうが敏感…と言いますか、先手を打っている感じがしますか?  個人の方が働き続けることやキャリアに敏感だったり危機感を感じやすいような気がしているのですが…

 

田中:人材マッチングをしていて感じることとしては、やはり企業のほうがよりハードルが高いなと。フリーランスになりたい人や複業をしたい人が増えている反面、その方たちを受け入れる側…つまりフリーランスや複業でできる仕事が圧倒的に足りていないのが実情だからです。これは弊社に限らずフリーランスマッチングを行っている他社エージェントやプラットフォーマーも同じ感覚のようです。

 

—なるほど。ということは圧倒的に個人の方が意識が高いというわけですね!

 

田中:ただ、一方で、企業様の中でも、会社の置かれているフェーズや規模感などによってはだいぶ温度感が変わってきているのも確かです。弊社のクライアントは7割が中小企業、スタートアップ企業なんですが、こうした企業様は大手に比べると採用ブランドの点でどうしても見劣りしてしまうので人材確保に苦戦するケースが少なくありません。そこで、人材活用に対して柔軟な企業様はこうした人材不足の課題を解消する手段として早くからフリーランスや離職女性に着目していました。

 

—そうやって御社にリーチしお取引が始まるのですね! 御社にご登録されているフリーランス人材はプロフェッショナルが多いと聞いていますので、クライアント企業にとって頼もしい即戦力というわけですね。

 

田中:企業側の温度感がまだまだではありつつも、一部の中小スタートアップ企業では形態に関わらず「優秀な方を取り込む」ということに対してものすごくアグレッシブです。そういう意味では確実に門戸は開かれてきているなと思いますね。

 

企業と働く個人が対等に働くために必要なこととは


—企業の門戸が開けば開くほど、フリーランスの活用も加速しそうな気がしますが、一方でフリーランス人材をうまく取り込めていない企業にはどんな特徴があるのでしょうか?

 

田中:ポイントは大きく4つあります。ひとつ目は、そもそも企業側に「フリーランスを活用する」という選択肢がないケース。経産省のデータではフリーランスを活用している企業はたったの2割と言われていますので、残りの8割に働きかける必要があります。これについては弊社はもちろん、私が理事を務めている一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)でも啓発活動を進めています。

 

—8割というのは驚きです! 企業側にフリーランス人材の活用という選択肢がない以上、啓発活動は欠かせないですね。

 

田中:時間はかかりますが、対象が多い以上、コツコツやっていくしかないのかなと。フリーランス協会では企業向けのセミナーを行ったり、フリーランス活用ガイドをWEB上で公開しています。

 

—なるほど、勉強になります。では、フリーランス活用の壁、その他3つについても教えてください。

 

田中:2つ目目は、「フリーランスは費用対効果が見えづらい」ということ。フリーランス人材を活用することによってどういうメリットが得られるのか、企業側がピンとこない場合がありますね。ここも弊社のコンサルタントが現場で事例をご紹介しながらまずはフリーランスについて知ってもらうことから始めています。3つ目は、「フリーランスの探し方がわからない」というケース。当社もメディアの露出やイベントの登壇などで認知していただく機会が増えてきてはいますが、フリーランス専門のエージェントは既存の転職サービスと比べるとまだまだニッチですから、やはりマッチングサービスの認知度向上は重要です。そして最後、4つ目が「セキュリティの不安」です。フリーランスはあくまでも外部人材なので、企業様にとっては情報漏えいを心配されることがあります。

 

—なるほど。4つ目については何かあった際の責任の所在が曖昧になるのはリスクですしね。ちなみに、ここについてはどのようなお話をされていますか?

 

田中:業務委託契約書をしっかりと交わしてもらうことですね。その中に情報漏えいや秘密保持についての条項を入れていただくことが大事です。あとは、フリーランス協会でご提供しているフリーランスの方向けの損害賠償責任保険を活用いただくのも一つかと思います。これは業務遂行途中や成果物に対して何らかの過失があったり、クライアントに損害を与えてしまった際の損害を最大1億円までカバーする保険なので、フリーランサーにご加入いただくことで、企業と対等なコミュニケーションが取れる意味でもおすすめです。

 

—ここまで、企業側のことを中心に伺ってきましたが、ここからは働く個人のこともお聞きしたいと思います。フリーランスになりたい人が増えている中で、田中さんが最近よくいただく質問などはありますか?

 

田中:冒頭にお話しましたように、将来フリーランスになることを見据えて「どんな経験やスキルを身につけておくといいのか」という質問は多いですね。ちなみに、どれだけフリーランスに興味がある人が多いのかというと、「Warisプロフェッショナル」事業では現在8,000名以上のご登録があるのですが、毎月だいたい200名ほど新規のご登録があり、今年度は昨年度の1.5倍近い方にご登録いただく月もありました

 

—それはすごいです! しかも御社のご登録者はほとんどが女性ですよね?

 

田中:最近はご家庭やお子さんの有無に関わらず時間と場所の自由度の高い働き方を求める方が増えていますので、たとえば30歳前後の若手フリーランスのご登録も増えてきています。とはいえ、2013年当時も今も、弊社のご登録者様はママ層がとても多いです。

 

—フリーランスは時間や場所の制約を受けにくい働き方だからこそママ層に支持されてきたのはよく分かります。同時に、ママに限らず多くの方にとってフリーランスが働き方の一つの選択肢になってきているのですね。

 

田中:直近ではご登録者様のうち約3割がすでにフリーランスの方です。すでにフリーランスとしてある程度ご活動されていて、「自分だけではリーチできないような案件やプロジェクトにリーチしたい」、「お仕事の幅を広げたい」といった目的でご登録いただくケースが増えています。

 

7割のメンバーが週の半分以上をリモートワーク!
どこよりも多様な働き方を実践しているWarisの挑戦

自分たち自身が多様で新しい働き方を体現するのが重要。普段リモートワークが多いからこそ対面の機会は大事。

 

—ここからは御社の働き方や人材活用についていろいろお聞かせいただきたいと思います! 冒頭で、ボードメンバーのみならず社員もリモートワークが基本とお話されていましたが、まずはリモートワーク主体の働き方や勤怠管理について教えてください。

 

田中:弊社では、契約形態、役割、業務内容、住む場所に関わらずリモートワークを活用していまして、利用率は96%です。朝から夕方まで週5日オフィスに常駐しているメンバーもいないので、ここ(神田オフィス)はだいたいいつも人が少ないです(笑)。

—確かに静かな感じですね…営業会社さんとかだと昼間はみんな外に出ているのでオフィスががらんとしていることが多いですが、御社ではこれが日常の風景なのですね!?

 

田中:弊社では業務の必要性に応じて適宜出社していますので、私もオフィスに来るのは週に1〜2回です。当社ではフレックス制を取り入れていますが、コアタイムは2時間だけ。朝10時〜12時がコアで、朝5時〜夜10時までを就業時間として認定しています。弊社の場合、フルタイムは1日7.5時間なので10〜12時を含めて7.5時間を目安に勤務してくださいね、という運用にしています。

 

—リモートワーク制度を導入する企業は増えていますが、時間的制約のあるママ人材の活用をきっかけにというケースが多いと思います。御社では一部の社員のための制度ではなく、全社的にリモート体制なのですね。

 

田中:そうです。ワーキングパパ・ママが多いので、たとえば午後に一旦仕事を抜けて自宅からPTAの会合に1時間行くとか、子どもの予防接種のために16時にあがるけどそのぶん早朝に稼働、なんていうことは日常茶飯事ですね。ちなみに、弊社ではリモートワーク以外にも、「時短勤務制度」も取り入れていまして、こちらも誰でも選択することができ、制度使用理由にも定めがありません。実際に、現在時短勤務を選んでいるのは40代の男性なんです。彼は、弊社以外にも副業で他社での仕事もしています。

 

—まさに多様な働き方の実践ですね!

 

田中:あとはメンバーの多様性もあります。弊社の従業員は23名ですが、業務委託のメンバーも10名ほどいます。採用では、離職経験のある方も積極的に登用しています。ちなみに、最近は札幌在住のメンバーも増えたのですが、彼女はすでに地元で自分の会社を立ち上げ、「北海道でも多様な働き方を広めたい!」という共感性をもって業務委託契約で参画しています。

 

—多様性に富む分、個性をどのようにまとめ、メンバーを育成しているのでしょうか? 情報共有の仕方も気になります。

 

田中:採用では、何よりもWarisのビジョンへの共感を重視します。組織としては、今後より一層共通の価値観を持って動ける強い組織になっていこうと考えているので、ビジョンやパーパス、バリュー含めて見直しをしていますね。具体的な行動指針を固め、言語化して社内に浸透、定着させることが大事だと思っています。コミュニケーションについては、リアル…つまり対面でのコミュニケーションをとても大切にしています。チームビルディングを目的とした合宿を年に1回、そして半期キックオフを年に2度行っていて、これについては遠方のメンバーも集合しています。日常のコミュニケーションとしては、「ランダムランチ」という施策をしています。メンバーをランダムに組み合わせてランチをとりながら交流するもので、ランチ代は会社が支給しています。新人の教育については、必ず担当者がついて、毎日のように「1 on 1」を行っています。

 

—なるほど。コミュニケーションやチームビルディングとは何かを改めて考えさせられます。社員同士が常に同じ空間にいなくても活気あるコミュニケーションは取れるし、効率よく働けるのならいいですよね。自由で裁量が大きいからこそビジョンへの共感が大切だということもよく分かりました。

 

田中:弊社ではこれからも働く個人にとっても企業にとってもサステナブルで、誰もがいきいきと働ける環境づくりをご支援していきます!

—最後に、読者へのコメントをお願いします!

 

田中:まは転職市場も売り手市場ですし、企業も良い人材を確保するには古い価値観に縛られず新しい働き方を柔軟に取り入れていく必要があります。働く個人にとっては、お話ししてきましたように、働き方の選択肢がこれだけ広がっているので、たとえば硬直化した働き方に苦しんでいたり、大きな組織の中で自分らしく働けていないなぁという悩みがあったりする女性管理職の方がいらっしゃったら、フリーランスや転職といった選択肢も視野に入れてどんどん動くといいですね。

 

—田中さん、今日は貴重なお話を本当にありがとうございました! 

 

共働き未来大学では、今後も多様な働き方を推進する企業の取材を行って参ります。
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Posted by 小山 佐知子

共働き未来大学ファウンダー、ワーク・ライフバランスコンサルタント
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