「できないことは無理しない」。引き算思考で豊かに暮らす
――お二人は、育児に加えて料理や掃除などの家事分野も思い切ってアウトソースしているとか。
幸介: うーん…。正直、思い切ってやってみた!感はないかなぁ。もともと合理的に割り切って考える方なので(笑)。お互いが正社員だとアウトソースしないとやっていけないところも多いなって。2人とも正社員であればシッターさんたちに支払うお金は捻出できるので、自分たちの体力を守るためにそうしています。
美香: 家事代行、私は掃除に関してはほとんど抵抗がなかったんですが、正直、料理については、少し迷いはありました。以前は料理が好きだったので「やっぱり自分で作ったほうがいいんじゃないか」みたいな気持ちもどこかあって。でも、今は子どもが2人いて慌ただしいし、そもそも前みたいに料理自体好きじゃなくなって(笑)。単純に美味しいごはんを食べたいなって思ってプロに頼んでいます。
――わかります。忙しい中、疲れた体で味気ない時短料理作っても…って感じですよね。
美香: プロに頼めば野菜たっぷりの美味しいご飯が自宅で食べられるんですから。おかげで一週間の生活が本当に楽になりました。料理以外の家事や育児も、アウトソースすることで心身ともに健康になりました。何より心に余裕ができたので以前よりもおおらかな気持ちで子どもたちに接せられています。
幸介: 子どもたちとの時間。これが一番だよね。この快適さを覚えちゃうともう前には戻れないよね。
美香: ちなみに私は産前産後にドゥーラ(※)のお世話になったんですが、これも本当に良かったです。家族以外の大人が子どもを継続的に見てくれるのは精神的に大きな安心感が得られました。
※産後間もない母親に寄り添い、子育てが軌道に乗るまでの期間、日常生活を支える専門家のこと。
――利害関係だからこそ、気兼ねや遠慮をしなくて済みますしね。
美香: 金額はそれなりにかかりますけどね。飲み会を何回かガマンすればいいので(笑)
――お二人の合理的な選択、本当に気持ちがいいです。ただ、一方では家事代行やベビーシッターといったアウトソースに抵抗感がある方も多い気がするのですが、幸介さんはどう思われますか?
幸介: 抵抗感の有無はそれぞれの感じ方なので良し悪しの話ではないと思いますが、仮に夫側に抵抗感があったとして、それが妻にワンオペを強いてもいいという理由にはなりませんよね? 外注が嫌なら、まずは自分で家事と育児を全部やってみればいいと思います。
――なんて気持ちのいい回答…。
幸介: 自分は育休も取らず、毎日帰宅も遅くて、家事育児は100%妻に任せっきり。そのくせしてシッターさんは嫌…。これはさすがに身勝手だと思うんです。妻が専業主婦ならまだしも、共働きなら奥さんが辛すぎる。もしも奥さんから「私、ワンオペもう限界なんで専業主婦になります。なので今後はあなたが私の収入分稼いでください」って言われたらどうするんでしょうか。言われて収入上げられるなら別ですけど……うーん、みんなそんなに稼いでいるのかなぁ?
美香: 共倒れになりそう…。ブラックな生き方になってしまっては本末転倒ですよね。
幸介: 今までの日本人男性は家事をしなさ過ぎたから、きっと家事とか育児がどれだけ大変かってイメージが沸かないんじゃないかなぁ。やっぱり当事者としてがっつり家のことをやってみればいいと思います。
――幸介さんは3か月ほど育休を取得されたそうですが、だからこそこうやって含蓄のあるお話ができるのでしょうね。
幸介: 育休を取ろう!とかそういう意識の高い発信をするつもりはなくて、単に「自分で家事と育児を全部やってみたらいかにそれらが大変かが分かるよ」って言いたいだけですよ。たとえば、土日の2日間は奥さんに外でリフレッシュしてきてもらって自分が家のことを全部やってみたらどうでしょう。2日間だけでも100%自分がやればけっこう大変だと思いますよ。
――間違いないですね。これは体験しないと分からないですからね。
美香: 我が家は私が先に育休から復帰して、その後時間差で夫が育休と取ったんです。だから夫の育休期間の3ヶ月は実質ほぼ彼のワンオペでした。
幸介: そもそも私は家事が嫌いですし得意でもないので、育休を経験して「やっぱりやれないことはプロにお願いしよう」と再認識しましたよ。家事育児を自分でやってみることでそうした選択肢が自分ごと化されるんだと思います。
――そんな幸介さんの育休、振り返ってみていかがでしたか?
幸介: 感想としては、純粋に幸せだなと。会社に行かなくていいですし(笑)。まとまった期間で育休を取ると、生活感がより分かっていいですよね。100%一人でやってみると、気をつけたり工夫するポイントも分かりますし。あとは、コミュニケーションも、妻がストレスに感じる部分が何となく想像つくようになるので会話が円滑になりましたね。