共働きパーソンのインタビュー、Case.4は、岡村ご夫妻です。妻紘子さんを中心にお話をお伺いしました。家族が増えて自分の環境に合わせた働き方をしたい方必見です。
プロフィール
【夫】岡村佳浩(41)会社経営
【妻】岡村紘子(37)生命保険会社契約者窓口オペレーター パート勤務
- 居住地:東京都
- 結婚年数:10年
- 出会ったきっかけ:共通の友人を介してmixi
- 共通の趣味: 映画やアニメを観たり、音楽を聴く
- 長男 (6)、次男 (1)との4人家族
ペンギン夫婦の私たち、見た目は昭和的夫婦!?
Q:現在のライフスタイルとワークスタイルを教えてください
紘子:私は現在、生命保険会社のオペレーターとしてパート勤務をしながら、株式会社manma(マンマ)と一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会のプロボノとしてパラレルワークを楽しんでいます。
結婚当初は、新卒で入社した旅行会社でバリバリ働いていて世界中を添乗で周る生活(2ヶ月に1度の頻度で2週間の添乗)でしたが、出産後は家族を最優先に考え、ベンチャー企業の経営者である夫を支えながら家庭が効率よく回るようにと、パート勤務を選びました。仕事は大好きなので、働くこと自体は諦めず、今は戦略的にダウンシフトのキャリアを歩んでいます。
私生活では、平日は夫の帰宅が深夜になるため、子どものお迎えや寝かしつけは私一人でこなしています。こう言うと “ワンオペ育児” そのもののようで大変そうだと思われるかもしれませんが、地域や仲間とのつながりの中で助け合い、楽しみながら子育てできています。
“共働き” というと、最近では夫婦ともにバリバリ働くという印象もあるようですが、我が家はその時その時の家族のバランスを最重要視しているので、今の私にとって仕事の比重は低めです。子どもたちの成長とともに働き方やコミットメントはどんどん変わっていくと思いますが、今の私たち夫婦は「夫が稼ぎ、妻は子育てしながらパート」というスタイルなので、一見 “昭和的な夫婦” に映るかもしれません。でも実際は、互いに仕事を持ち、夫婦二人で協力しながら子育てをする、いわゆるペンギン夫婦です。家事にしても、休日は夫が洗濯から掃除機がけ、食事の準備、子どものお世話まであらゆることをこなしてくれるので私の出番はほとんどありません(笑)ワンオペが辛いどころか、夫には本当に感謝しています。
もっと多様なママの働き方があっていいはず!
自信をもって「家族最優先!」と言える社会になってほしい
Q:正社員総合職からパート勤務に働き方を変えたきっかけは何だったのでしょうか?
紘子:私にとって2011年の東日本大震災は、働くことはもちろん、生き方についても価値観を大きく変える出来事でした。震災直後、夫は帰宅困難になり、私は生後5ヶ月の長男を抱きしめながらとても不安な夜を過ごしました。その時、「この子は絶対に私が守る!」と心に誓ったんです。
当時の私は離職中でしたが、長男が1歳になる頃には再就職しようと思い、ちょうど就職先や働き方を検討していたところでした。そんなさなかの震災。この経験をきっかけに、私は雇用形態よりも家族を第一に考えられる働き方を重視することにしました。具体的には、①震災などで交通機関が使えなくなったとしても徒歩1時間以内に子どもを迎えにいける職場 ②余計な衣服費や化粧品代をかけずに済む職場(最悪すっぴん・ジーンズOK等) ③ 残業がほぼない職場 ④ 働きながらお金の勉強ができる職場 です。現在の仕事(生命保険会社のオペレーター)は条件がぴったりで、オペレーターとして働きながら独学でファイナンシャルプランナー2級を取得しました。
Q:妻の働き方や雇用形態にかかわらず「ダブルインカム」が大事とのことですが、それはなぜですか?
紘子:私はよく「家族を最優先にしたいのなら、子どもが小さいうちは専業主婦でもいいのでは?」と言われることがあるのですが、家庭優先といっても100%家庭に入ることは選択肢にはありませんでした。というか、実は前職を退職した後、一度だけ専業主婦になろうとしたことがあったのですが、3日で飽きてしまった経験があって…(笑)。4日目には仕事を探していました。細くても社会と繋がっていたかったし、ブランクも嫌だったんです。
そして何より思うのは経済面ですね。ダブルインカムは本当に大事です。過去、リーマンショック後に引っ越しを余儀なくされるほど家計が不安定になった経験があるのですが、その際、リスクヘッジとしての共働きの大切さを実感しました。夫が経営者だといっても、ベンチャー企業の経営は厳しく、自分が働かないとどうにもなりません。夫も必死ですし、私もそんな頑張る夫をさまざまな形で支えたいと思います。私の役割は一番の応援団でいることかな、と思っています。
Q:「フルタイムではない自分」に後ろめたさを感じたこともあったとか?
紘子:はい。正社員フルタイムワーママではない自分に後ろめたさを感じたこともありました。今の女性活躍推進の風潮では、バリバリ仕事をしているママにスポットが当たることが多いので、「家族優先!」と言うことに後ろめたさのようなものを感じたこともありました。でも、二人の息子を見ていて、「この子たちの成長を間近で見られるのは今しかない! これを見逃したら絶対に将来後悔する!」と思いモヤモヤを断ち切りました。
パート勤務になってからは、総合職だった頃と異なり仕事はライスワーク(食べるための仕事)という位置付けに変化しました。仕事単体でみると淡々とした日々ですが、総合職の頃に味わっていたような生きがいやりがいはプロボノとしての活動で得られているので、トータルで見るとものすごく充実しています。
女性も社会でバリバリ働き、管理職になるなど活躍することはもちろん素晴らしいですが、一番大切なのは、仕事のみならず生活そのものにワクワクできる女性がもっと増えることなじゃないかな、と思います。長い人生、ライフステージに合わせて働き方を柔軟に変えながら成長できるといいですね。
育児は仕事の役に立つ!
巻き込み力と巻き込まれ力で家族がもっと強くなる。
紘子:私たち夫婦には2つのこだわりがあります。一つは子育てについて。必ず夫婦二人で協力し合って子育てすることが大切だと考えています。私は長男の妊娠初期からどんどん夫を巻き込み、子どものお世話(沐浴や抱っこ紐での外出など)は何でも私より先に夫に体験してもらいました。そうすることで素直にすごい!という気持ちが湧くのでおだてではなく心から「すごいね!」と言うことができます。「すごいね!上手だね!さすがだね!」と夫を褒めちぎり、夫のモチベーションを上げて楽しい育児の世界へ巻き込みました。
佳浩:「巻き込み力」というものがあるとすれば、「巻き込まれ力」というのもあるかもしれませんね。私自身も、そもそも共働き・共育ては普通のことだと思っているので、目の前のやるべきことについてはやりたいことや得意なことなど勘案しながらフレキシブルに対応できればいいなと思っています。子育てについては特に、自分一人の人生では得られないことばかりなのでどんなこともやってみると楽しいことばかりです。
紘子:夫は今では、スーパーイクメンぶりを発揮して、土日は家庭のことほとんどを上手に何でもこなしてくれています。本当に感謝しています。
そして大切にしているもう一つのこだわりは、地域との関わりです。私たち家族だけで孤立しないように、地域のつながりの中で子育てをすることをモットーにしています。長男が0〜2歳の時に私は地域の親子サークルを立ち上げ、さまざまなキャリア(背景)を持つママと仲良くなって家事や育児のコツを共有したり、困った時はお互い助け合ってきました。 長男には離乳食期から続く強烈な偏食の悩みがあったのですが、これも地域のベテラン保育士さんにお世話になったりと、自分の力ではどうにもならないことは他人の協力を得るべくどんどん出向いていきました。していただいたことは別の形で恩を返したく、今年度は小学校のPTAの学級委員として地域と小学校の連携に関わっています。
子育て6年。地域や多世代との交流を通して職場と家庭以外のコミュニティの大切さを実感!
紘子:子どもたちにはいろいろな世界を見せてあげたいということです。世界といっても外国に連れていくということだけでなく、私たちの身近な社会の中からさまざまなことを学び、気づき、掴んでほしいと思います。
現在プロボノとして参画している株式会社manmaは、2014年に現役大学生が立ち上げた団体です。「家族をひろげ、一人一人を幸せに」をコンセプトに、大学生や若手社会人が子育て中のご家庭に遊びに行き、子育て体験をする「家族留学」を行っています。
我が家もこの「家族留学」の受け入れ家庭になったことがきっかけでmanmaに出会い、そのご縁から今では社会人プロボノとして活動させてもらっています。私は広報担当としてSNSの投稿をメインに動いていますが、その他にも広報戦略を立てたり、大学生と連携した事業で学生向けのライフキャリア教育のワークショップを企画運営しています。
佳浩:お互いが職場と家庭以外の世界に触れているのは、夫婦が互いに依存しすぎないという点でもいいことだと思います。SNS時代に生きる私たちですが、リアルライフというのは案外登場人物も固定化されています。なので、さまざまなコミュニティでいろいろな人や価値観に触れることは人生を豊かにすることにつながると思います。とはいえ、お互い好き合って結婚しているのでそっちのけにされてしまうのは寂しいですが(笑)。その点、manmaの活動は私も好んで参加しているので、家族みんなで親しい人や時間を共有できるのは嬉しいですね。
妻のプロボノ活動については、本人が楽しければそれでいいのではと思っています。妻はいろいろなことに興味をもってアクションを起こすまでが本当に早いので、どこか一箇所にフルコミットしているよりもフレキシブルで向いているような気がします。この先子育てが終わって自由な時間が増えるとプロボノじゃ物足りない!と言い出すこともあるかもしれませんが(笑)、いまの生活にとってはとてもいいポジションなんじゃないかなと思います。
紘子:manmaの活動では子どもたちを大学のワークショップに連れて行くこともあるので、長男は大学がグッと身近になったようです。
佳浩:子どもたちに早いうちから「学校以外のコミュニティがある」ということを伝えてあげられるのはいいことだなと思っています。息子たちは妻のプロボノ活動を通して普段学校では体験できないことをたくさん体験しています。小学一年生で、大勢の大人の前でプレゼンする機会なんて普通まずないですよね(笑)。子どもに多様な経験をさせてあげられること、親も普段出会わない人たちとコミュニケーションできること、そして家族でスペシャルな経験ができるのはとても楽しく豊かなことだなと思います。
今は共に子育てを楽しむパートナー。
将来は二人でまた世界各国を巡りたい!
紘子:私は旅行会社勤務時代、海外25カ国の添乗をしてきたので、息子たちが自立したら、夫専属のツアーコーディネーターとしていろんな国を旅したいなと思っています。今二人で話をしているのはスイス。夫は写真撮影が趣味なので、のんびり鉄道旅行をしながら絶景をカメラに収めてほしいです。
佳浩:私は二人で一緒にできる何かをやりたいです。社交ダンスとかいいですね。あとは、世の中の助けになるような仕事めいたものを、あまりキツくない範囲でやりたいですね(笑)
読者へのメッセージ
子育てをする上で、夫婦のパートナーシップは何より重要です。両親が仲よく、お互いを尊敬し支え合う姿は、子どもたちの脳裏にきっと刻まれて、愛着形成の土台になっていくと思います。何より、母である私の心が安定していると穏やかな子育てができると思っています。育児期は楽しさと同時に苦労も伴うので時にはパートナーに当たってしまったりすることもありますが、そんなときこそ「ありがとう」の気持ちを大切に接していければいいかもしれませんね。私も、「ありがとう」「ごめんね」「大好きだよ」は、そばにいる大事な人にこそ、しっかりと伝えようと心がけています。
岡村 佳浩
株式会社クリエイターズマッチ 取締役副社長
大学卒業後、ソフトバンク系列の会社で車用品のECサイト、求人情報サイトのWebデザイナー、サービス企画、プロデューサーを経験。2006年、当時の同僚とともに3人で独立し、Web制作会社を設立。さらに1年後、インターネット上で場所や時間を気にせず働くことのできる広告デザイン制作を軸に、クリエイター教育、オリジナルの業務管理ツールを企画・開発・販売する株式会社クリエイターズマッチを設立。現在は同社取締役副社長を務める。
岡村 紘子
大学卒業後、クラブツーリズム株式会社入社。長男出産まで旅行業界8年。長男1歳の時に大手生命保険会社のオペレーターとしてパート勤務スタート。独学でファイナンシャルプランナー2級取得。次男の育休中、去年12月にプロボノとして株式会社manmaに参画。今年6月、第二子の育休から復職。8月からはパラレルキャリアを見据えてプロボノとして一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会事務局にて広報修業中。