2017.08.31,

Case.2 貯金は減っても未来への投資を選んだ育休夫婦|石原 大地 × 石原 美保

共働きパーソンへのインタビュー、vol.2は、第3子の誕生をきっかけに夫婦揃って1年間の育児休業を取得している石原ご夫妻です!

プロフィール

【夫】石原 大地 (41)  団体職員(独立行政法人)
【妻】石原 美保 (38) 新聞社 広告局勤務

  • 居住都道府県:東京都
  • 結婚年数:9年
  • 出会ったきっかけ:六本木のスポーツジム
  • 共通の趣味: 離島への旅(マルタ共和国のゴゾ島、伊豆七島、小笠原諸島)
  • 長男(7)、長女(4)、次女(0)、夫の母との6人家族

夫婦揃って1年間の育児休業を取得中!

Q:現在のライフスタイルを教えてください

大地:今年5月から、夫婦で1年間の育児休業を取得中です。長男と長女が生まれた際は育休を取らなかったのですが、第3子の誕生で「育休を取るとしたらこれが最後のチャンスになるかな」と思ったこと、40歳という節目の年を迎えたこと、第3子の誕生と同じタイミングで通勤時間が片道1時間半かかる部署への異動を命じられたことから、思い切って育休の取得を決意しました。今はとにかく子どもたちと全力で向き合う毎日です。

美保:私は次女の妊娠中に、あるメルマガで『積極的な育休活用のススメ』というセミナーを知ったのがきっかけで、育休中のママたちによるプロボノ活動(ママボノ)に参加しました。プロボノは仕事のスキルを活かしたボランティア活動。私は、自分には社会で役立つどんなスキルがあるのか確かめたく、て参加してみたのですが、実際、異業種のママたちの仕事ぶりからとても多くの刺激を受けました。

出産後は、産後ケア教室『マドレボニータ』に通いました。産後はホルモンの関係もあり、頭がボーっとしがちですが、有酸素運動とシェアリング( “〇〇ちゃんのママ” ではなく自分を主語にするワーク)で体と頭を使い、気持ちが前向きになりました。現在はNECワーキングマザーサロンの運営メンバーとして活動しています。

先日は、都内女子大の講義で育休中のママとしてお話させていただく機会(主催manma)がありました。三度の育休取得経験で学んだことや伝えたい想いをお話するとてもいい時間でした。

■ 石原家の1日のタイムスケジュール ■
6:20 (妻)起床、弁当・朝食・離乳食作り
7:00 (夫)子どもたち起床、朝食、長男長女を送り出す、家事、空いた時間で英語学習
10:00  (妻)産後ケア教室またはヨガ教室、(夫)ブラジリアン柔術の練習
13:00  (夫)長女幼稚園お迎え、(妻)買い物・夕食作りなど
17:00 夕食、(夫)長男長女習い事送
20:00   子供たち帰宅、お風呂、洗濯
0:00  就寝

結婚は“異文化融合”
衝突しながらも歩み寄って家族になっていく

Q:結婚9年。3人のお子さんにも恵まれましたが、大地さんは元々 “結婚願望ゼロ” だったとか?

大地:はい。結婚前は、老後を迎える前に死ぬ前提で人生設計していました。一人で生きていける力こそ人間にとって必要なことだと本気で信じて疑わなかったです。交際中だった妻にも、面と向かって「自分は家庭を持つ気はない」と公言するような、無神経で酷い男でした。でも、今の私は、妻がいないと精神的に野垂れ死にます(笑)。

一人っ子で、幼い頃から自分の両親の夫婦喧嘩を日常的に見て育ったからかもしれませんが、荒んだ人生観の私を、妻は交際中から見捨てずにいてくれました。そんな彼女がある日、ポロっとこうこぼしたんです。「30歳までに結婚して子供を産みたい」と。そこで結婚を決意しました。

美保:夫は本当に結婚願望ゼロの風変りな人でしたが、結婚して子どもを持ち、考え方がどんどん進化しています。今では家庭第一となり、子どもの病気や健診などのときには率先して会社を休んでくれています。

大地:結婚はもちろん、特に子どもが誕生してからは人生が大きく変わりました。荒んだ人生観がガラッと変わって、家族のありがたさや幸せを感じるようになりました。そして妻と子どもたちの未来についても真剣に考えるようになりました。

美保:とはいっても、結婚生活は育ってきた環境の違う2人の “異文化” が交わる場。正直、結婚当初はたくさん衝突しました。相手にとって当たり前だったことが自分には理解できない……。そんなことが多々あって。相手の考えも受け入れ、自分に非があれば認める。結婚生活はこれの繰り返しですね。

大地:お互いの欠けている部分を補い、支え合う……これが結婚なのかな?と。昨年次女が産まれ、「自分は父親としてどうあるべきか」「自分の親が私に対してしたことを繰り返さず、できなかったことを子供たちにしてあげるために何をしていけばよいか」――。深く考え、模索するようになりました。育児休業の取得もその中で必要だと判断しました。

美保:第3子出産後、夫が育休を取得することで長女が保育園を退園になったり、収入も半減したりと大変なこともたくさんあります。でも、夫婦で育休を取ることで家族と向き合い、ゆったりと将来について考えたり、今しかできないことをしたり……。本当に貴重な時間を過ごさせてもらっています。

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仕事は大切 でもそれ以上に家族が大事!
家族を守るために、仕事も家事も助け合わなければ成り立たない

Q:お2人にとって共働きとは?

大地:私の親の世代くらいまでは、“夫は仕事をし、妻は専業主婦で家庭を守る” が理想的であり、結婚して間もない頃は、私もどちらかというとそうした考えだったように思います。でも、妻とコミュニケーションをとっているうちに、そんな固定観念に縛られずに双方が仕事を持ち、家事育児を一緒にやればいいという単純なことに気づいたんです。3人の子どもに囲まれた今では、夫である私もある程度の家事ができないと生活が回りません。なので、積極的に家事・育児を楽しんでいます。

現在、妻は育休を活用しながらNECワーキングマザーサロンの運営メンバーとして活動するなど、復帰後を見据えて精力的に活動しています。私はそれらに協力したり、時に便乗しながら、妻の仕事を応援しています。 “共働き” については、新卒で新聞社に入社しキャリアを築いている妻のほうが私よりはるかに優秀なので、可能な限り協力、応援したいというスタンスですね。

美保:私の両親は自営業者で、夫婦でお店を切り盛りしていたため、毎日休みなく夜遅くまで働いていました。年に1回家族旅行に行くことはあっても、毎日家族で夕食をとれないことや土日に両親がいないこと、「ただいま」と家に帰っても誰もいないことは、子どもとしてとても寂しかったです。そして、母は50代という若さで乳がんのため亡くなりました。自分のことを後回しにしなければ助かったかもしれない……。そう思うと、仕事とは何かと考えてしまいます。働くことは大事ですが、子どものことや、何より自分のことを一番大事にしていかないと、大切なものが全部崩れていってしまいます。

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夏休み、父と息子はシアトルへ
親子問題に真正面から向き合い、笑って泣ける父になった

Q:出産後、働き方や生き方に大きな変化があったそうですが?

大地:結婚するまで私が結婚や家族というものに肯定感を持てなかった背景には、育った環境というか、自分の親との関係が大きく影響していました。ある時、妻が私に『新しいパパの教科書』という本を見せてくれたんですが、表紙に書かれていた “子どもの前であなたは笑っていますか?” という一文を読んドキッとしたんです……。

実は、ちょうどその頃(第3子が誕生した頃)、片道1時間半もかかる場所への異動を言い渡されていました。これが育児休業を考えたそもそものきっかけだったのですが、それまで片道30分だった通勤が3倍になるというのは、それだけ家族といられる時間を奪われるということで。

私は父親に遊んでもらった記憶もなければ、一緒にスポーツで汗を流した記憶もありません。仕事を理由に父が私に対してした過ちを私も繰り返そうとしているのかと思うと悲しくなったんです。生きる上で何が一番なのか何かを真剣に考え、育休取得の “強行”※ を最終的に決断しました。
※大地さんの職場が 諸手を挙げて男性の育休取得を推奨しているわけではない旨については後に説明

ちょうどその頃、この『新しいパパの教科書』という本を出版したNPO法人ファザーリングジャパン関西法人が、父親と子ども二人で米国シアトルへ旅行するというイベント『父子ツアーシアトル』を企画していること知りました。いい機会かも!という気持ちで応募したところ、幸運にも渡航できる3組の父子に選出され、この夏、長男と共にシアトルへ旅立ちました。現地では、マイクロソフトに勤務する日本人のお父さんたちと交流をして、日米の文化の違いや子育ての違いにとても感銘を受けました。そして人生観が大きく変化しました。

美保:夫は育休に入り、家にいる時間が長くなったことで長男を叱る回数が増えました。父子ツアーの参加募集は、まさに私がそんな夫や父子関係に悩んでいるときに知りまして、夫に参加を促してみたんです。逃げ場のない海外で息子と向き合い、 “笑っている父親” になって帰ってきてほしいと願って…。

その結果、夫は “笑っている父親” はもちろん、“感動して泣いている父親” になって帰ってきました。帰国した2人に会ったとき、行く前とは何か違う雰囲気に気づき、親子の強い絆を感じました。

そしてまた、私自身も子離れできたというか、一歩引いて向き合うことができるようになりました。それまでの私は、夫の息子に対する言動をいちいち気にして夫の子どもへの接し方にケチをつけたり、息子が夫に叱られれば庇ったりしていました。でもこうして母子分離を試みて口を挟めない環境になったことで、冷静になれました。

<シアトル父子ツアー> かけがえのない時間になった

戦略的育休活用のススメ!
“夫婦で育休” は未来への投資

美保:育休はキャリアにマイナスなどころか、プラスになります。でも、プラスになるかどうかは自分次第だと感じています。

というのも、私の一度目の育休は、家族以外の大人とは会話せず、慣れない赤ちゃんの授乳やオムツ替えだけで1日が過ぎていく日々でした。保活も不安で、とにかく早く復帰したかったです。二度目の育休は、母が入院し病院に通い、復帰の焦りもある中で資格の勉強をして…辛いことの多かった二度目の育休を経て、三度目の今回は、心から毎日を楽しんでいます。

普段の仕事ではできない経験をしたり、出会わないような人とつながったり。自ら外に出ていくことで視野が広がり、考え方も変わりました。復帰をすると仕事に家事に育児にと、本当にノンストップです。だから育休期間は、仕事から離れて子どもと過ごせる貴重な時間でもあります。でも、それは決してただの休暇じゃないんですよね。そしてブランクでもありません。一度立ち止まって自分と向き合う良い機会だと思うのです。

大地:厚生労働省によると、2016年度の男性の育児休業取得率は3.16%だそうです。同省は2020年までに男性育休取得率を13%まで上げることを目標としているのですが、そんな目標が達成できるわけがないのは、悲しいかな誰の目にも明らかですよね。

実際に育休を取得してみて分かったのですが、そもそも制度自体、利用しやすいものにはなっていません。保育園に通園中の子がいれば、自治体によっては問答無用で退園になってしまうし、給付金の交付も育休開始から3~4か月後に初めて振り込まれる始末です。つまり、その間は完全な無収入となってしまうので、ある程度の貯えがなければそもそも育休を選択することすらできないのです。

そして思うのが、制度としての育休はあっても会社が心から男性の育休取得を賛同してくれることはない、ということ。男性の育休取得が推奨され徐々に認められてきたとはいえ、法務省管轄の独立行政法人に勤務する私でさえ、育休取得については一筋縄にはいきませんでした。面談では、「育休ではなく時短勤務にできないか」「今後のこの組織におけるキャリアをどう考えているのか」など問われ、他の選択肢を考えさせようとしているかのようでした。

Q:男性の育休取得は課題もたくさん。
それでも、大地さんが「育休を取得してよかった」と迷わず答えるのはなぜですか?

大地:確かに収入は激減して、通帳の残高は減る一方。完全に赤字でしんどい部分もたくさんあります。まぁ、会社に行ってないんだからしょうがないですよね。でも、それと引き換えにさまざまなことを考える時間を得られるのが育児休業じゃないかな、と思っています。家族と向き合うということだけでなく、自分自身と真剣に向き合うという意味でも。

そもそも男性にとって、普通は “家事・育児以外の任務がない” なんてことはないのです。だから、男性が育児に “参加する” というと、子どものおむつを替えたり、洗濯をしたり、掃除をしたりという、ほんの雑用的なことに落ち着いてしまう。でも、そろそろそういう “手伝い” の域から出ないとられないといけない。決して “家の中にママが2人” ということではなくて、男性として、パパとしての生かし方を考えるという意味で。

育休中、家族と真剣に向き合うことによって、子どもの未来を含めた自分の人生を真剣に考えるようになります。少なくとも私にはそうでした(まだ半分残っていますが(笑))。子どもがまだ新生児の頃は、付きっきりで面倒を見るだけで精一杯でしたが、子どもの成長とともに時間的な余裕も生まれてくるし、要領も分かってきます。そうなったときに、「父親だからできる子育ては何か」考える時間ができるんです。

男性の育児休業は、まだまだ限られた一部の企業や団体でしか取得できないものであったり、ハードルも高いです。でも、子どもの将来や自分の未来を本気で考えたいというパパには、私は迷わず育休の取得をお勧めします。自分と家族への投資ですから!

<夫婦で育休は未来への投資!>  

海外移住を視野に、生き方と働き方を模索中

人生100年と言われる時代ですが、私たちの親(夫の父、妻の母)はそれぞれ50代で他界しています。働き方が違っていたら、2人ともこんな早くに亡くなることはなかったのかもしれません。

これからの社会は、仕事も子育も、場所への固執がなくなると思います。子ども達には日本だけに囚われない生き方をしてほしいし、私たちの老後についても、気候の穏やかなのんびりした環境で過ごしたいです。現在は、海外移住を視野に入れながら生き方と働き方を探しています。

石原 大地

団体職員

大学卒業後、不動産・金融業界を経て公的な仕事に転職。現在、1年間の育児休業中。


石原 美保

新聞社広告局勤務

新卒で新聞社に入社、新聞広告の校閲など深夜土日勤務あり、第1子出産復帰後庶務部へ異動、第2子出産復帰後営業部へ異動、第三子出産、現在産休中。

Posted by 小山 佐知子

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