2020.04.10,

夫婦間の揉めごと、あなたはどうする!? 対立を家庭の成長チャンスに変える「コンフリクト・マネジメント」とは?

こんにちは。プロボノの田所 祐輝です。

多くの企業で新年度を迎える春。部署移動や昇進昇格といったご自身の変化はもちろん、お子さんがいらっしゃる方の中には入園・入学といったライフイベントを迎えた方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、例年とは全く違った新年度を迎えた方も多いと思います。先日、「共働き未来大学」で実施した在宅勤務(ワーク)に関するアンケート(※)でも、全体の74.5%の方が「夫婦で在宅勤務(ワーク)をしている」と回答するなど、私たちの働き方も一変しています。

 

今年の春は共働き夫婦間の “揉めごと” の火種が多め!?

 

季節の変わり目や年度の切り替えといった、“変化” は、本来自然に受け順応するものです。しかし、その “変化” の幅が想定よりも大きかったなら…どうでしょう。たとえば、共働き夫婦の場合、どちらか一方に転居を伴う異動辞令が出た際などは、仮にそれが栄転という喜ばしいことだったとしても、家庭としては喜んでばかりもいられません。なぜなら、転勤は多かれ少なかれ、パートナーの仕事やキャリアそのものへの影響が生じるからです。

 

たとえば、「夫が海外転勤を命じられて駐在妻として帯同することになったキャリア女性がアイデンティティの危機に陥った」事例は身近で耳にしたものです。納得いくまで夫婦で話し合い着地させられるのが理想ですが、最悪の場合、夫婦間に起きる対立から家庭の空気が悪くなってしまうかもしれません。

 

今回の新型コロナウィルス感染拡大に伴う働き方の変化もまた、夫婦間の揉めごとを生むひとつの要因になりそうです。先のアンケート調査でも、「夫婦で在宅ワークをしている」と回答した方のうち58.5%の方が「ストレスを感じている」と回答しています。

 

もし、あなたがそのような状況に見舞われるなどして、夫婦間の対立に苛まれている場合、これからご紹介する「コンフリクト・マネジメント」の考え方が役に立つかもしれません。

 

「コンフリクト・マネジメント」とは?

コンフリクト(Conflict)は直訳すると「衝突」「対立」「葛藤」になりますが、家庭の中のことと置き換えて考えてみると、夫婦間での「揉めごと」や「意見の食い違い」と捉えていいでしょう。マネジメント(Management)は「管理」と訳されるので、「コンフリクト・マネジメント」は、意訳すれば「意見の対立によって生じる揉めごとを上手に解決するための考え方」といったところですね。

 

お互いがWin-Winになる「協調的解決」をめざそう

家庭の中で揉めごとや意見の食い違いに遭遇すると、言い合いの結果として「夫婦のどちらが折れるか?」、もしくは「どのあたりで妥協するか?」が落としどころになるかもしれません。しかし、「トーマス・キルマン・モデル」という考え方を参照すると、着地点の候補はもう少し広がりそうです。この考え方では5つのアプローチ方法に分類することができます。(参照:図1)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この図の見方ですが、まず、縦軸と横軸を説明すると、縦軸は「自分自身の主張を通す度合い」を、横軸は「相手の主張を受け入れる度合い」を指しています。

 

コンフリクト・マネジメントにおける5つのアプローチについて説明すると、まず左上の「競争」は、自分の意見を通して相手の主張を受け入れないという領域です。『ドラえもん』に出てくるジャイアンの如く、自分の思う通りに物ごとを進める解決方法です。一方で、右下の「受容」は、相手の主張を受け入れつつ自分の意見を通さない領域です。これは何ひとつ自分の思う通りに物ごとを運べずドラえもんに泣きつくのび太君のように、自分が折れることで問題解決をしている状況です。真ん中の「妥協」は、そのことばの通り、お互いが一定程度我慢することで折り合いをつける状況のこと。やはり一番無難に感じるのがこれかもしれません。左下の「回避」は、どちらも自分の主張を通さずに話し合うことを辞めてしまう状況を指しています。

 

そして残りのひとつ、右上の「協調」が、お互いの主張が両方叶う解決方法を建設的に探していくというアプローチです。トーマス・キルマン・モデルは、コンフリクトが生じた時にお互いのニーズが満たされる選択肢が有り得る可能性を示唆してくれています。

 

「健全な対立」によって逆境は乗り越えられる

日本では、調和や協調性を重んじるあまり、表立った対立や衝突はよくないものとして避けられる傾向があります。ただ、対立や衝突は組織の成長に不可欠なものであり、これは社会の最小単位である「家庭」にもいえることです。

 

ということで、「協調的アプローチ」の理解を深めるために、ここからは『未就学児の子どもがいる30代の共働き夫婦Aさん(架空の家庭)』を例に、お伝えしていきましょう。

 

Aさん一家

・家族3人で大阪に暮らしている
・夫はIT業界のエンジニア
・妻は人材派遣業界の営業職
・娘は3歳で保育園に通っている

今回、妻のこれまでの頑張りが会社に評価され、希望していたマーケティング職への異動機会が得られた。しかし、マーケティング職は東京本社がメインということで、転居を伴う異動となりそうだ。

 

このケースでは、「キャリア上のチャンスを掴みたい妻」と「現在の会社、現在の住居で生活を継続したい夫」の間にコンフリクトが生じます。この際、「妻が異動を諦める」または、「夫が仕事を辞めて東京で再就職する」という解決策もないわけではありませんが、「2人の希望を叶える方法は本当にないのか?」と考えていくのが、先ほどご紹介した協調的解決のアプローチ方法です。

考えられる方法としては以下のような感じでしょうか。

 

妻:東京への転居を伴わない形でマーケティング職に就けるよう勤務先に提案してみる

夫:妻が東京出張をする際、自分が優先的に子どものケアをできるよう勤務先に家庭の事情を理解してもらう(そのためのアプローチを開始する)

 

現実的にはさまざまな事情が重なり合い双方の希望が100%叶うという真の協調的解決策が必ず見つかるわけではないかもしれません。しかし、共に働き、共に家庭を守り、その中でお互いの自己実現をサポートしていく気持ちがある世帯においては、この協調的問題解決アプローチの姿勢を取れることが、きっとお互いの人生の充実度合いを高めるための一助になるかと思います。

 

ライフイベントの変化を迎えるご家庭においては、夫婦だけの時間を作り「コンフリクト・マネジメント」のための建設的な対話の時間を作ってみてはいかがでしょうか?

 

(※) 共働き夫婦の「在宅勤務/在宅ワーク」に関するアンケート調査
2020年4月3日(金)〜7日(火)の5日間 WEBにて実施、回答数55

 

Posted by 田所 祐輝

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