これを読んでくださっているあなたは、100歳まで生きる自分を想像できますか?
今年2017年3月に厚生労働省が発表した日本人の平均寿命は、男性が80.75歳、女性は86.99歳と過去最高を更新し、日本は超長寿国になりました。100年ライフはもう目の前です。
ところで、私の友人の中には、小さい子どもを育てながら実の親や義理の親を介護している人も少なくなくありません。“ダブルケア” の過酷さ、大変さを垣間見ることもしばしばです。
一口に長生きといっても、介護状態で誰かのお世話になるのはちょっと…。
そんな風に思ったりもするのですが、ご安心を! 私たちはこの先、 “健康で長生き” する可能性がとても高いのです。
こちらの本をご紹介しましょう。
ベストセラー「ワーク・シフト」の著者らが書いた「The 100-YEAR LIFE」の日本語版「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)長寿化時代の人生戦略」。
昨年2016年10月に発売されて以降、今も話題を呼び続ける本書。電車の中吊り広告や書店の入り口で見かけたことがある人も多いと思います。
この本は私に多くの気づき、ワクワク感、緊張感、そしてスパイス程度の不安を与えてくれました。
冒頭に、こんな一文が出てきます。
2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される。いまこの文章を読んでいる50歳未満の日本人は、100年以上生きる時代、すなわち100年ライフを過ごすつもりでいたほうがいい。
3歳になった私の息子が100歳以上生きるのが当たり前なだけでなく、私自身も100年ライフを過ごす可能性がとても高い。しかも、本書では「健康に長生きできる社会が到来する」と明示されています。
超長寿社会を生きるということは、お金や健康、家族のこと、仕事など、確かに戦略的に考えていかなければならないことがたくさんありますよね。長生きするには、もともとアテにできない年金以外にも安定的な収入源が必要になるでしょうし。
本書では、従来の3つの人生ステージ(教育を受ける時期/勤労の時期/引退後)は崩壊する、と提唱されています。
“3ステージ” な生き方の終焉
「教育→仕事→引退」3ステージの生き方は通用しなくなる。
長寿社会とは、より長く働く社会でもあるということです。引退後に余生を楽しむという人生はもう終わり。年齢に関してのステレオタイプを取り払っていかなくてはいけません。
みんなが同じ時期に同じことをする一斉行進の時代は終わり、世界は “マルチステージ” の人生に変わりつつあります。1人ひとりが違った働き方を見出し、また人生のイベントの順序もそれぞれ違ってきます。自分にとって理想的な人生を追い求めていくことになるのです。
「頭では理解できるけど、実際のところどうなるんだろうね……」
私は、昨年末からライフシフトの読書会イベントを実施しているのですが、上記は多くの人に共通する感想です。ピンとくるようでピンとこないこのもどかしい感じ。
実際、多くの人はまだ昭和的従来モデルが生涯設計の前提になっているので、それも無理ないことかと思います。大人になる過程で、就職(社) を前提にしたキャリア教育はなされても “生き方” は誰にも教わってきていないので、私たちは無意識に祖父母なり、親なり、人生の師匠なり、身近な人たちの生き様を参考にしながら歩んできました。
「いい大学に行っていい会社に入れば将来は明るい」と未だに親に言われて身動きがとれなくなっている子どもたちも見てきました。歯がゆくて、複雑。
本書では、3ステージに変わるマルチステージ化の説明として、以下のキーワードが出てきます。
エクスプローラー(探検者)
さまざまな可能性を試す、探検・探索の時期。例えば、旅や留学などを通じて幅広い進路や自分の生き方について探ったり、知識やスキルの再習得に取り組んだりすること。
インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)
組織に雇われず、自由と柔軟さを求めて小さなビジネスを起こすこと。フリーランス的な感じでしょうか。
ポートフォリオ・ワーカー
さまざまな仕事や活動に並行して携わること。副業的な意味合い以外にも、地域活動や趣味を極めるための活動など、ボランティア、プロボノ活動なども含まれるイメージです。
今後は人生のうちで年齢に関係なく何度もこの各ステージを行ったり来たり(トランジション)するようになるだろう、と述べられています。
「うーん、やっぱり、ピンと来るようで来ないかも……」
とつぶやき苦笑いしているのは、いまこの記事を書いている私の横にいる、仕事仲間のK君。
「これまでの常識が大きく変わるってことなんだと思うけど、半信半疑だったり、不安だったり。とはいえ時代の変化には逆らえないからなぁ。アテもないのに今すぐ会社員辞めてフリーになりますとかじゃなくて、今の自分にできることを積み重ねていくしかないのかな。オーナーシップを持つ、というか。」
おー、いいこと言うね、K君!
私もまた、そう思います。一足飛びに何かしようと思っても正直失敗します(経験あり)笑。突飛なことをするのではなく、まずは今の自分としっかり向き合って、スキルや知識を整理する。人脈を構築する。足りない部分や興味のある部分は学んで身につけ、整理し、決断につなげていく。それを繰り返していくことが人生のオーナーシップを持つということなのかな?と思います。
今は難しくても、いつか波に乗るようにマルチステージを行ったり来たりできるといいなぁ…。
人生100年時代に必要な3つの「無形資産」
今後は、お金という分かりやすい有形の資産とは別に、家族や友人関係、知識、健康といった「見えない資産」とのバランスをとることがますます重要となるとのこと。
生産性資産
仕事で成功し、所得を増やすためのキャリアの見通し
・スキルと知識
・仕事仲間
活力資産
肉体的・精神的な健康と良好な人間関係
・健康
・バランスの取れた生活
・友人、家族やパートナーとの良好な関係
変身資産
人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力
・自分についてよく知っていること
・多様性に富んだ人的ネットワーク
・新しい経験に対して開かれた姿勢
やっぱりこれも、一朝一夕にどうにかできるとか身に付けられるものでもなく…。
3ステージ時代の安定した老後はもはや幻想なのだとしたら、やっぱり自分の身は自分で守るための戦略を立てるであったり、こうした無形資産を蓄えておきたいものです。
家族の構成が急速に変わる
新しいパートナーシップのモデルが生まれ、家族の構成は急速に変わりつつある。
すでに戦後の日本的「働くお父さんと専業主婦のお母さん」モデルは過去のものになりつつありますが、100年ライフで考えても、家庭の中で一人(父親)が大黒柱として一家を養いながら、なおかつ変身も遂げていくというのは無理な話といえそうです。どちらかが働いて、どちらかが学校で学び、それを交代で行うシーソー的な夫婦関係も今後はもっと増えていくだろうなと思います。
日本でも共働き率はどんどん上昇していますが、共に働くのであれば、家事や育児を一緒に担う仕組みにももっと対応していかなければなりません。100年ライフは、人生においてパートナーと過ごす時間が今より大幅に増えるのですから。
人は一人では生きていけない、とはよくいいますが、これからの未来予測ができない時代はなおさらそうだと思います。個としての軸を持った人と人とが出会い、家族になったり地域社会で出会ったり一緒に働いてイノベーションを生み出したり……。多様性に溢れた時代だからこそ、それをしっかりと享受できる社会をつくるたに、私たち共働き未来大学としてなにができるのか?
そんなことを考えながら改めてライフシフトを読んでいます。