こんにちは! プロジェクトメンバー・ライターの今井明子です。今回は、これから就職活動をする女子学生や、社会人になりたての若い女性に向けて書きたいと思います。
女性が働くにあたって、どうしても考えなければいけないのは、結婚や出産のことだと思います。結婚相手が転勤族なら仕事の継続は難しいですし、家事や育児を全くしない男性と結婚して、それらの負担を一手に引き受けるとなると大変です。
世の中には、なかなか解消されない待機児童問題や、男女の家事分担の不公平、マタハラやマミートラックなど、女性が仕事をしながら子どもを育てることへの困難さがたくさんの記事として報道されています。
そんな記事を読めば、「なんか大変そうで、両立できる自信がない」と怖気づくのも仕方のないことです。それが、いつになっても消えることのない、根強い専業主婦志向に現れてくるのでしょう。
専業主婦志向はいつの時代も根強い
少し前、「絶対に年収1000万円以上の男性と結婚したい」という記事が話題になりました。
女性は出産によって無収入や収入源になるリスクがありますから、結婚相手の年収は絶対に譲れないポイントだと考える女性は多いはずです。
しかし、32歳の女性が「年収1000万円の男性をつかまえて、自分は専業主婦になりたい」と婚活に励むのは、「いつかビッグになる」という自称ミュージシャンや、「今度こそ一山当てる」といって詐欺にあうフラフラしたオッサンと同じようなメンタリティだと思うのです。
だって、この女性の希望するような、40歳以下の男性で年収1000万を稼ぐ人を見つけるのは至難の業です。しかも、容姿や家事能力の備わった女性など、結婚しなくてもたやすく「外注」できる。このような男性にとっては、美しい容姿や家事能力を備えた女性など、あえて結婚して一生養うメリットなどないのです。
ではどうすればいいか。それは、やはり男性だけに1000万を求めるのではなくて、自分も稼いで夫婦合わせた「世帯年収」が1000万になることを目指すほうがよっぽどハードルが低く、建設的だということです。
今のご時世、男性の雇用も安定しませんし、「職場が嫌だ」「新しいチャンスをつかみたい」「心身ともにヘトヘトなのでちょっと休みたい」と思ったら、今の職場をやめられるだけの余裕がほしい。そんなときに、妻側に収入があるだけで男性は安心です。もし、専業主婦でいたいのなら、男性を2~3年無収入でいさせても問題ないくらいの資産を差し出せるくらいの甲斐性があったほうがよいのではないでしょうか。
また、この記事の女性は、年収1000万の暮らしについて根本的に誤解しています。
地方でしたら確かに余裕のある暮らしができるのかもしれませんが、東京都内や、都心に通勤できる範囲で暮らす世帯にとって、年収1000万は「広い部屋に住んで私立の学校に行かせてあげる」ことはなかなか厳しいです。子どもを小学校から私立に行かせるのならもっと収入が必要ですし、中学から私立だとしても、広い家はまず無理。
確かに、仕事を辞めたいと思ったときに「一時的に」なら辞められる年収かもしれません。でも、子どもがいるのならずっと専業主婦はちょっと厳しい。多くの人は、子育ての手が離れたら、子どもの大学進学の費用を稼ぐためにパートを始めます。
専業主婦のつらさは、目につかないだけ
それと、世の中には女性が仕事をしながら育児をするつらさばかりが記事になりますが、だからといって専業主婦が楽だというわけではありません。専業主婦からの「つらい」という声はなかなか上がってきにくいだけなのです。
世の中には、「子どもの小さいうちは子どもを自分の手で育てたい」と育児に専念する女性がたくさんいるのですが、どんなに子どもがかわいくても、24時間子どもとべったりで幸せを感じられる人は、実はそう多くありません。まず、子どもが小さいうちはお風呂にゆっくりつかる時間すらないほど、自分の時間はまったくない。また、今や子ども同士を遊ばせるのにもアポが必要な時代ですから、子どもの遊び相手はどうしても母親になってしまいがち。しかし、大人が子どもと遊んで楽しいと思えるにはある種の才能が必要で、その才能がないととても退屈なのです。
離乳食、トイレトレーニング、しつけ、友達付き合いに関しても、専業主婦の場合は孤独です。保育園なら、保育のプロによる巧みな働きかけや、ほかの子どもの影響を受けて自然に身に着けられるそれらを、すべて母親が手探りで情報収集し、試行錯誤しながらやらなければいけない。孤独なうえ、責任は重大です。
「ずっと子どもといるとイライラしてしまう」「子どものいない間にサッと用事を済ませたい」…と子どもを預けたくても、昔のように、近所の人が「ちょっと子どもを見てあげるからいっておいで」という世の中ではなくなっています。今は待機児童問題が深刻で一時保育であっても、預けられる場所がなかなかありません。しかも、ベビーシッターや託児所の利用料は高く、そのお金は夫の稼ぎから出してもらうことになる。もし預けられたとしても「専業主婦なのに育児放棄か?」という偏見が強くて預けるのが後ろめたく感じることでしょう。
さらに、夫が転勤族の場合は、妊娠中や小さな子連れの引っ越しは相当キツイです。新しい土地で学校や習い事探しを一から始めるのも大変な労力です。なのに、新しい場所に慣れたと思ったらまた引っ越し。せっかく築き上げた地域のつながりはその都度リセットです。
結婚を機に専業主婦になったけれど、子どもを産んでみて専業主婦がつらくなり、慌てて仕事を探して子どもを保育園に預けたという人も知っています。
というわけで、もし、「楽をしたい」という理由で専業主婦を選びたいのなら、それは考え直したほうがよいと思います。仕事をしていても、していなくても、それぞれにしんどいところと楽なところがあるのです。
「親も専業主婦だから私も専業主婦になりたい」と思う人も多いのですが、親とは時代が違うのでロールモデルになりません。そして、自分がしてもらったことと同じことを子どもにはしてあげられない可能性があります。
幸せな共働きを実現するために
これからの時代は共働きが基本です。もちろん、妊娠中のつわりがきつかったり、マタハラにあったり、保育園が見つからなかったりして、仕事を辞めざるを得ない局面はいくらでもあるでしょう。でも、それは一時的なことで、基本的には一生仕事を続けるものだという意識をもっておいてほしいと思います。ところが、今は、結婚や出産でいったん退職すると、女性は再就職したくてもなかなか希望の職につけないという現実があります。
ですから、皆さんには若いうちから一生、できれば好きな仕事を続けていくには何をしておけばいいのかということを考えながらキャリアを積んでいってほしいのです。それは、何も今の会社に一生勤務することだけを目指すわけではありません。もちろんそれができればよいのですが、たとえ退職しても、再就職先がすぐ見つかるとか、起業できるようにするとかして、仕事に困らないようにすることを考えてほしいです。
そして、もし結婚や出産もしたいと考えているのなら、配偶者選びも大切になってきます。安定した収入があればもちろん安心ですが、男性側だって仕事をやめたり収入が減ったりする可能性はおおいにあります。大切なのは、夫婦でどのように協力し合いながら家庭を運営していけばいいのかを、きちんと話し合える人を探すことなのです。