2017.12.06,

共働き夫婦の不公平感は「名もなき家事」にあり 見える化のためには、ワンオペ育児を経験すべし

こんにちは! プロジェクトメンバー・ライターの今井明子です。
共働き夫婦の問題点として必ず話題に上がるもの。それは家事・育児の分担の不公平感です。

先日、大和ハウスの「共働き夫婦の『家事』に関する意識調査」に興味深い調査結果がありました。我が家の家事分担の比率について、夫側と妻側の見解にギャップがあったのです。なぜ、妻が「私ばっかり家事をやらされている」と感じてしまうのか。それは「名もなき家事」の存在があると、この調査結果は示唆しています。

名もなき家事とは何なのか。それは、冷蔵庫や生活用品の在庫チェックと買い出しとか、トイレのタオルを替えるとか、麦茶を沸かして補充しておくとか、そういう細々とした作業のことです。

これについては、私自身もおおいに納得です。子どもがいなかったころは名もなき家事の存在なんて、意識したことはありませんでした。ろくに家事をしなくても回っていましたし、こういう名もなき家事は特に負担感がなく、私がほとんど引き受けていても決して「なんで私ばっかり」とは思わなかったからです。

 

しかし、子どもが産まれると違います。1日にやるべきことがどっと増えるので、こういう細々とした名もなき家事がグッと存在感を増してくる。育児に手を取られて家事にまで手が回らないときに、夫が座って携帯をいじっているのを見ると、「そんな暇があったらこれをやってくれ〜! やるべきことをやってから携帯をいじってくれ!」とどれほど思ったことか。夫と比べて私のほうが時間の融通の利く働き方をしているため、平日の夜は家事・育児の多くを私が担当することには異存はないのですが、夫婦ともに予定のない休日となるとやっぱり平等に家事・育児をやってもらわないと不公平だなあと感じます。

男性にも家事をやってもらうために、よく「男性は察するのが苦手だから、女性側が指示してあげて」などと専門家からアドバイスされるものです。しかし、名もなき家事というのはとても細々としているうえ数が多いため、いちいちお願いすると膨大な数に上り、指示するほうは面倒くさいし、指示されるほうは「またかよ」「いちいちうるさいな」とうんざりします。

しかも、指示されるほうは「なぜそんな細かいことを今やらなければいけないのか。あとでまとめてでいいじゃん」と思っている。

と〜こ〜ろ〜が! そうはいかないんですよね!

干してあるお皿を片づけないと、汚れたお皿は洗えません。暑い夏に麦茶が切れてしまったら、沸かしてから冷えるまでに時間がかかる。麦茶は切れそうになる前に次の物を沸かして冷やしておかなければいけないのです。だから、名もなき家事は「いつやるか」がとても大切なのです。

 

では、夫に名もなき家事の存在に気付いてもらい、自発的にやってもらうにはどうしたらよいか。そのためには、名もなき家事の見える化が必要です。それに役立つのが「共働きの家事育児タスク表(こちらからダウンロードできます)」です。これはAERA編集部が制作したものですが、私もこのタスク表を共働き夫婦に見せて、夫婦でそれぞれどれくらいやっているのかを聞いて回る取材をしたことがありました。

そのとき印象的だったのは、夫側のほうから「自分は前衛、妻は後衛で、自分がこぼした球をすべて妻が拾わなければいけないということに気づいた」という言葉が出たことでした。
でも、気づくだけじゃだめなんです。実際に動いてもらうというもうひとつのハードルがあります。そのためには、どうすればよいか。それはワンオペで家事と育児を回す経験をすることだと思います。

 

実は我が家では、出産直後から夫婦の育児スキルに差ができないように徹底的に意識してきました。里帰り出産をしないだけではなく、産院への入院中に夫に面会に来てもらったら、その場でミルクの授乳やおむつ替え、沐浴をやってもらうところからスタートしました(これについては今でも冗談交じりに「鬼だ…」と言われます)。おかげで、夫はワンオペ育児もこなせ、産後2か月から私は単独で、休日なら夜にも外出できるようになりました。世間の男性陣に比べれば、夫は相当ワンオペ育児にたけており、私は恵まれている部類に入ると思います。でも、でも!…贅沢と言われればそれまでなのですが、それでも「名もなき家事」による不公平感はつのるのです。

それはなぜか。夫が日中に育児で手いっぱいになって、おろそかになった家事の山は、夜に帰宅した私がひっそりと片づけていたからです。しりぬぐいしてくれる人がいるから、名もなき家事には気づきようがないし、すぐやらなければいけないという切迫感にも欠けてしまうのでした。つまり、ワンオペ育児は複数日連続でやらないとダメということなのです。

 

というわけで、もう少し子どもが大きくなってからは、私が泊りがけで出張に行く予定も入れてみました。ところが、ここにも落とし穴があった。そういうときは夫は子どもを連れて実家に帰るのです。まあ、実家に連れて行けば、親も喜ぶし自分も楽ができるしと一石二鳥ですし、その選択肢に文句は言いようがないのですが、これではやはり状況は変わらないわけです。そういうわけで、いっときは「いっそのこと、1週間抜き打ちで家出してしまおうか」と思うくらいイライラがつのりました。

しかし、幸いにして最近ではそれがましになってきました。それは、第二子の妊娠によるつわりで、家事が本当にできなくなってしまったからです。休みの日や早く帰宅した日は、夫は私の代わりに家事・育児をやってくれるようになったので、多少は家事の段取りがわかってくれたように思います。

ただ、妻がつわりで苦しんでいても、世の中すべての夫が自発的に家事をまるっと請け負ってくれるわけではありません。どうすれば「名もなき家事」は夫に意識してもらえるでしょうか。

そのヒントは、やはり取材で聞いた話から得られました。育休を長期間取られた男性に取材したところ、その方は、「料理するにも段取りがあって、皿洗いなんてあとでやればいいじゃんと思っていたけれど、食後すぐにやらないと次の食事の準備ができないんだと気付いた」とコメントされていたのです。

 

なるほど、男性育休のメリットのひとつとして、そういう点も挙げられるのかと目からうろこでした。現在男性育休の取得率は3%程度とまだまだ低く、職場では男性の育休取得に対して「取る意味ってあるの?」と懐疑的な人も多いはずです。でも、共働き夫婦なら(いやいや、専業主婦家庭でも)、男性育休は前向きに検討したほうがいいんだなと思いました。

Posted by 今井 明子

酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職を経て、2004年より編集者&ライターに。2012年に独立。気象予報士の資格を生かし、母親向けお天気教室の講師や地域向け防災講師も務める。 家族は夫と2014年生まれの長女と2018年生まれの長男。
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