2018.10.15,

“多様な働き方社会” は本当に実現するのか  ~LGBTと就労を考える①~

近年、LGBTなどのセクシュアル・マイノリティ(※1)について注目が集まっています。「言葉は知っているけど、実際はちょっと遠い存在かな…」と、こんな風に感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、電通ダイバーシティ・ラボによると、日本におけるLGBTは7.6%。

およそ13人に1人の割合と考えるととても身近に感じませんか?

今月5日、東京都で全国初となる “ LGBTに関する差別をしてはならない ” という「差別禁止条項」を盛り込んだ条例が可決・成立しました(第4条において「都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」と記載)。

罰則はないものの、都民、そして都内の事業者は、性的指向(※2)、性自認(※3)を理由とした差別は禁じられることになり、企業における今後の取り組みが注目されています。

そこで、このコラムでは、“ 知る ”   “ 働く” というテーマで セクシュアル・マイノリティについて綴っていこうと思います。

 

LGBTを知る

●LGBTの意味

LGBTとは、

L・・・レズビアン(Lesbian:女性の同性愛者)
G・・・ゲイ(Gay:男性の同性愛者)
B・・・バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)
T・・・トランスジェンダー(Transgender:心と身体の性が不一致。日本では「性別越境者」とも)

の頭文字から作られた言葉です。

LGBTのうち、「L」「G」「B」は性的指向、「T」は性自認に関する言葉であることから、少々ややこしい、との声もあるのですが、元々、欧米の当事者たちがセクシュアル・マイノリティの表現として使っていたものです。その流れから日本でも2005年頃からセクシュアル・マイノリティを総称する表現の一つとして使われています。

●多様な性のあり方

とはいえ、セクシュアル・マイノリティの総称としてのLGBTには実に様々な性が包含されています。男女関係なく、自分以外に対して恋愛感情や性的欲求を抱くことがないアセクシュアルや性自認や性的指向が定まっていないクエスチョニング。また、Xジェンダー(男性でも女性でもある “ 両性 ” や男性でも女性でもない “ 無性 ” を望む人)、インターセクシュアル(男性でも女性でもあるような身体的特徴を持っている人)等々――。とても多様ですよね。
下図は、全てのセクシュアリティ(性)をカバーするものではありませんが、セクシュアリティを簡易的に説明するために制作されたものです。

出典:電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」

図.セクシュアリティマップ

例えばわたしの場合、身体と心の性は女性で好きになる性は男性ですから⑩。このマップは全てのセクシュアリティをカバーするものではないもの、多様な性を視覚的に、しかも分かりやすくとらえることが可能です。
ここで大事なのは、そもそも性別が必ずしも男と女という区分けで存在するものではない、ということ。上図ではセクシュアリティを大まかに12分類していますが、個のセクシュアリティはLGBTとそれ以外、という風に二分されるものではなく、また12種類でおさまるものでもなく、グラデーションのようになっているのです。

●LGBTから性の多様性を表す “ SOGIE ”へ

上記の流れを受け、国際的にもLGBTから “ SOGIE ” が使用されることが多くなってきています。

SOGIEとは、全ての人が性の要素として持つ

SO・・・Sexual Orientation(性的指向)
GI ・・・Gender Identity(性自認)

これらに「男らしさ」「女らしさ」、つまり髪型や服装、仕草など見た目を表す

E ・・・Gender Expression(性表現)

を組み合わせた概念です。

重ねて言いますが、この「属性」は全員が持っている性の要素なので、特定の人を指すものではありません。LGBTがレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーという「カテゴリー」を指すのに対し、SOGIEは「どの性別を好きになるのか」、「自分をどういう性だと認識しているのか」という「状態」を指すので、わたしたち全員に当てはまります。この概念では対象が限定されないため、当事者と非当事者の間になんとなくあった壁がなくなるのでは、と期待されているのです(個人的には、この言葉がどんどん広がっていってほしいです)。

 

LGBTが直面する課題と動き

2015年、東京都渋谷区が同性カップルに対し交付を開始した「パートナーシップ証明書」を機に、LGBTを含むセクシュアル・マイノリティの存在が可視化されました。その結果、性の多様性や性を表現する言語が徐々に浸透・周知されてきています。とはいえ、同調圧力が強く、マイノリティにとって生きづらい社会と言われる日本では差別と偏見を恐れ、カミングアウトしづらいのが現状です。

例えば

・学校で「男のくせに」「気持ち悪い」「ホモ」「おかま」「レズ」などと侮蔑的な言葉を投げかけられ、自尊感情が深く傷つけられた。
・就職活動の際、結婚などの話題から性的指向や性自認をカミングアウトしたところ、面接を打ち切られた。

出典:LGBT法連合会 性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第2版)

ある衆議院議員が某雑誌に寄稿した文で「LGBTの人たちは子どもを作らない。つまり『生産性』がない」などと表現し、批判が相次いだことも記憶に新しいですが、学校や職場、医療、社会保障などさまざまな現場で、困難に直面しているのです(実際わたしが先日LGBTイベントに取材に行った際にも同様な意見が数多く見られました)。

そのため、子どもの頃からLGBTに関する教育の必要性や公的書類への戸籍上の性別記入の有無、同性婚や就労環境への具体的な対応について、今後、法整備を見据え踏み込んだ議論が求められています。

 

今月11日は、性的指向や性自認を周囲に公表したセクシュアル・マイノリティの人々を祝う『国際カミングアウト・デー』がありました。実は同日、企業が取り組むLGBT施策を評価・表彰する「work with pride 2018」が開催されており、そして21日には企業とLGBTが自分らしく働くことを一緒に考える「RAINBOW CROSSING TOKYO 2018」が控えています。どちらのイベントにも共通するテーマは “ 働く ”。そこで次回のコラムではLGBTを含むセクシュアル・マイノリティを取り巻く就労環境と課題について、企業側の取り組みも絡めながらお伝えできればと思います。

 

 

【※1】セクシュアルマイノリティ・・・レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーだけではなく、インターセックス、アセクシュアル、クエスチョニング(セクシュアリティが判断できない人)など、ストレートではない多様な性を生きる人たちの総称。
【※2】性的指向・・・どういった性の人に恋愛/性愛感情を抱くか。
【※3】性自認・・・自分の性の認識。
【※4】性表現・・・自分の性をどう表現するか。
          ここでいう “ 性 ” は、男性女性に限らない。

 

【参考】
柳沢正和・村木真紀・後藤純一(2015)『職場のLGBT読本』 実務教育出版.

電通ダイバーシティ・ラボ 「LGBT調査2015」

LGBT総合研究所 「LGBT に関する意識調査」

LGBT法連合会 性的指向および性自認を理由とするわたしたちが社会で直面する困難のリスト(第2版)

東京レインボープライド

work with Pride

RAINBOW CROSSING TOKYO 2018

Posted by Yamada Ikuko

編集&ライター業のママフリーランス。会社員の夫とともに「わが家らしい共働きスタイルってなんだろう?」と日々模索中。
詳細プロフィールはこちら

関連記事