みなさん、こんにちは! 共働き未来大学プロボノ・編集ライターの山田です。さて、みなさんは『子連れワーキング』という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか? 最近企業でも子連れ出勤という取り組みが増え、その認知度が急激に高まっている働き方です。かくいう私も子連れワーカー。早いもので7年目に突入しました。今回のコラムではその経験から感じている子連れワーキングに関するあれこれを書かせていただこうと思います。
なぜ子連れワーキングをしようと考えたのか
その理由は大きく二つあります。
①保活に囚われたくなかった
②子どもの側にいたかった
まず①。働く親にとって厳しい保活。フリーランスになるとさらにそのハードルは上がります。なぜかというとフリーランスは会社員よりも点数(保育施設の利用基準(調整)表※)が低く設定されているからです。勤務などの証明(稼働日や労働時間)も難しいですし、産休・育休明けの加点がつかない、などハンデがあります。
妊娠前からフリーランスで働いていたわたしは、この事実を産後知るところとなり、理不尽さに愕然としました。働く(働きたい)親は、仕事を人質にされ、慣れない乳幼児の世話と保育園のため、点数獲得(稼ぎ?)に奔走しなければならないんです。意味不明です。
でもここで引き下がるわけにはいきません。自分が納得できない働き方をするぐらいなら、違う働き方を考えればいいんだ! そう思い立ったのです。
そして②。現在2児の母ですが、実は長子は2度目の妊娠で生まれた子。初めて授かった子は流産してしまったのです。最初の妊娠の時、わたしは出版社でバリバリ働き、仕事を思う存分満喫していました。出産予約のため訪れた総合病院で流産を告げられたわたしはどん底に突き落とされることに。妊娠すれば出産できるものだと疑いもせず思っていたなんて、なんて愚かで無知だったのだろう。それもこれも不規則な生活、内に外に飛び回る仕事をしていたせいではないだろうか? ひたすら自分を責め続ける日々を過ごしました。
その後まもなく、会社員からフリーランスへ。そして流産から3年経った頃、2回目の妊娠が発覚。妊娠初期から切迫流産・早産との戦いでしたが、心拍確認、安定期、そして臨月と段階を踏むごとに不安は減り、ようやく待ち望んだ出産までたどり着くことができました。その出産も緊急帝王切開となり最後までハラハラしっぱなしでしたが、何と言っても子どもが無事生まれたこと! その安堵から自然に涙があふれてきたことを覚えています。
子どもを授かり、出産するということは奇跡なのだ。だからこそ子どもとの時間を大切に過ごしたい。自分の好きな仕事と子どもの成長を天秤にかけたくない――。
そして導き出した答えは一つ。それが、子どもを連れて仕事を再開する『子連れワーキング』だったのです。
『子連れワーキング』のメリットとデメリットは表裏一体
子連れワーキングを選ぶ理由は一人ひとり違います。なので多少個人差があると思いますが、わたしが感じる子連れワーキングのメリットとデメリットを挙げたいと思います。
メリット
・子どもが働く(仕事)ということに興味を持つ ・子どもの“今”を逃さず楽しみ、見守ることができる ・常に子どもの側にいるので、親子共々安心 ・家族レジャーや子どもの学校行事、急な発熱など、家族の予定・有事に合わせて仕事を調整できる |
デメリット
・育児・家事と仕事のバランスを取れるようになるまで苦労する ・常に子どもが横で走り回っているので、仕事の稼働率と収入が下がることが多々ある ・子連れワーキングを了承してくれる受注先はそう多くない ・子連れワーカーと言えども、いざという時の預け先候補の確保が必須 |
子連れワーキングでいうメリットとデメリットは表裏一体だということが何となくお分かりいただけるでしょうか。
例えば、家での原稿執筆。日中、原稿を書いているすぐ横で子どもたちが雄叫びを上げながら走り回ります。「ママ、遊ぼ~」。目をキラキラさせながら誘ってきます。受け流しながらPCに向かいますが、実際のところ筆はなかなか進みません。結果、子どもを寝かしつけてからの深夜作業が何日も続きます。結構な試練です。
外での打ち合わせに子連れで向かう場合でも、周囲にご迷惑をかけていないか。これが最大の気がかりです。打ち合わせ中、子どもが静かにしていてくれるとは限りませんし、先様が子連れ可ではない場合、子連れワーカーといえども子どもを預けていかなければいけません。
また収入面でいうと、乳幼児を抱えるフリーランスの子連れワーカーは上を目指すことが厳しいです。とはいえ、とにかく子連れワーク中はマルチタスク処理能力が鍛えられるので、子どもが手を離れる頃には仕事の量・幅ともにレベルアップが期待できます。今デメリットが多かったとしても、数年後、数十年後には出世払い的なリターンは確実にあるのです。
“子どもが側にいる場で働く”ことは、親と子にとっても「楽しい!」と思える瞬間を分かち合い、かけがえのない思い出作りを毎日しているようなもの。仕事終わりにはハイタッチで喜びを分かち合えますし、親が必死の形相で仕事に取り組んでいることだって、子どもにとっては「仕事って何だろう」の第一歩。仕事を頑張っている親の姿を子どもはしっかり見てくれていますから。
先に述べたように個人差がある子連れワーキングのメリット・デメリット。これは自分を俯瞰することで初めて分かるものです。
「なぜ子連れワーキングをするのか」。この問いを多面的に捉え、一つの正解に固執しない。常に思考を柔軟に、主観的な部分と客観的な部分をバランスよく考えられるよう、意識すること。この繰り返しこそが自分にとってのベストな「ライフワークバランス」を見つける近道ではないかと思うのです。
『子連れワーキング』を柔軟な働き方の一つに
私見ですが、今後『子連れワーキング』は柔軟な働き方、これからの働き方の一つとしてあるべきものだと考えています。その想いから先日、子連れワーキングの提唱・実践をするプロジェクト『tsu.wa.ru』を立ち上げ、子連れワーキングの周知に取り組んでるところです。
ただ、わたしのように子どもを預けずに仕事をしたい人もいれば、子育てと仕事をきっちりすみ分けて働きたい人。また、女性だけが子連れワーキング当事者なわけでもないですし、(建前ではなく)子育て環境整備が整い周囲との軋轢さえ生まれなければ、パパだって子連れワーキングをしたいと考える人もいるでしょう。
全ての人に子連れワーキングを、という意味ではなく、例えば、やむを得ず預け先が見つからないといった場合に「子連れ可」「子連れワーキングOK」という働き方の選択肢があるのとないのとでは全然違う、ということを訴えたいのです。
子どもの側で働きたい、または仕事をしたいのに預け先がどうしても見つからず働けないという人たちが、ワーク&ライフを諦めるのではなく、子どもがいてもいなくても仕事に取り組める仕組み、社会になることを願ってやみません。
【※】保育の必要の程度をを点数化したもの。この点数が高いほど保育園に優先的に入園が可能となる。