こんにちは! 共働き未来大学プロボノ・編集ライターの山田です。1月29日、経済産業省の有識者会議が「人生100年時代」の人材力強化には “キャリア権を確立すべき” という提言骨子をまとめました(2018年現在)。「ん? キャリア権って何?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。『キャリア権』はまだ権利として確立されているものではないものの、確立されれば私たちにはなくてはならないものになるでしょう。『キャリア権』で働き方の未来はどう変わるのか。それではコラム、スタートです。
『キャリア権』を知ろう
『キャリア権』とは
働く人々が意欲と能力に応じて希望する仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利
※キャリア権のキャリアとは職業生活(職業キャリア)全体を指し、かつ人生(ライフキャリア)と相互に影響を受けあうもの
と定義されている理念です。
もちろん会社員や自営業、パートなど雇用形態に関わりなく、今働いている人・これから働きたいと考えている人まで、男女問わず年齢・国籍問わず “全ての働く人” が対象です。就社した企業から決められた仕事で職業生活を送るのではなく、自ら職を選び、そのために必要な能力や経験を身に付けていく活動をする権利が働く人にはあり、そしてその活動全般を企業側も社会も支援していきましょう。その権利を確立していきましょう、と提唱されているものです。
人生100年時代到来で根底から変わる人生設計
ではなぜ、今『キャリア権』の確立が早急に求められているのでしょう。それは間もなく訪れる “人生100年時代” が大きく関わっています。
日本は世界一の長寿社会を迎えており、今後も寿命の伸びは続く、と見込まれています(驚くことに2007年生まれの子どもたちの半数は107歳まで生きるだろう、という試算もあるほど!)。
人口の約半分が健康に100歳まで長生きする時代が到来する――。非常に喜ばしいことですが、満足度の高い老後を過ごすためにも経済基盤の確保は必須。生きるためには稼がなければなりません。
例えば、企業の寿命は20~30年と言われていますね。22歳で大学を卒業し、65歳定年制の企業に勤めたとします。43年勤続することになるわけですが、お気づきですか? なんと個人の勤続年数の方が企業の寿命を13~23年も上回る計算に。
しかも寿命は100歳。定年が65歳であれば35年間、75歳だとしてもその後25年間の人生が待っている。将来、公的年金の支給額が先細ることは既定路線でしょうから、退職後の25~35年を満足いく生活レベルを保持しようとするならば、今から相応の貯蓄が必要です。2007年生まれ以降の世代では “105歳まで” を老後として想定しておく必要があるかもしれませんね。
わたしたちが人生100年時代を有意義に過ごすためには、健康な身体を維持することはもちろん、職業生活期間の延長や “将来の備え” のストック準備等々、さまざまなことを念頭に “今” を過ごす必要があるのです。
人生100年時代に立ちはだかる4つの大きな壁
人生100年時代到来イコール「健康な身体を維持し、かつ生きるために働き続ける」――。この命題は個人にとっても社会にとっても大きいもので、とても無視することはできません。現在よりも働く期間が長くなるという事実。その期間を今のビジネスパーソンと同じように働こうとすると以下のような壁が立ちはだかります。
・働く期間が長期化 → こまめにスキルを磨いたりインプットを図らないと、自身のキャリア価値が下がる ・現在のような長時間労働で働き続けると、身も心も擦り切れてしまう ・企業そのものが生き残れる保証がないため、“定年まで1社で働く” 可能性が低い ・将来に備えるためにはパートナーなどとのダブルインカムによる貯蓄が効果的だが、 |
この壁を乗り越えるために、『キャリア権』の確立が必要になってくるのです。
『キャリア権』が自分らしい生き方を引き寄せる
では、もしキャリア権が確立された場合、どんな未来が待っているのでしょうか。
新卒生の就職活動は “就社” ではなく正しく “就職” に変わるでしょう。働くことに対しやりがいを求め、自分に必要なスキルを磨く人が増えそうです。そのために複業やプロボノ活動に勤しむ等、個人の関心や適性に合わせたキャリア形成が可能になるでしょう。キャリア権下では年齢や国籍、性別、障がいの有無に関わらず、全ての人が職を得て暮していけるよう、その実現に向け、法で守り、支援していく社会になるはずです。
企業が一方的に働く人のキャリアを決めるのではなく、個人自らがキャリアに責任を持ち、選択する時代へと変わるのです。
もちろんそのためには前段の壁に加え、長時間労働の是正や社会の意識改革等、取り組まなければならないことは多いのは事実。ですが “働く”を通し、自分らしい生活、そして生き方を選択することができるようになる――。なんだかワクワクしてきませんか?
人生100年を生きるために “働く” 。そのために今、「どう働き、どう選択するのか」。わたしたちはキャリア、そして生き方を自らの手で引き寄せる時代にいるのです。
【参考】
経済産業省 中小企業庁
我が国産業における人材力強化に向けた研究会