パパは可能性の塊
変化する余地があるからこそ “きっかけ” と “機会” を大切にしたい
小山:これまで多くの働く女性と出会ってきた中で、お子さんがいる方はみなさんこうおっしゃるんです。「子どもが生まれてキャリア観が大きく変わった」と。日々の育児と仕事の両立も試行錯誤しながらみなさん本当に頑張っていらっしゃる。
河本:いや、本当に今の子育て世代はみなさん一生懸命ですよね。私たちの時とはまたちょっと違う感じで。
小山:私たちの世代は「両立しなきゃ!」と自分を追い込んで頑張りすぎちゃう世代なのかも、と思うことがあります。特に産休育休が定着した2000年代以降に就職した層は、子どもを産んで働き続けること自体当たり前になっている。『ぶら下がり』なんていう言葉も登場して、真面目なママほど全部を自分で背負ってしまっているように思うんです。
河本:一生懸命な毎日はそれはそれでいいんですけれど、少し立ち止まって自分の素に戻る機会、場があったらいいなぁと。そういう場を提供することが、一生懸命頑張っているパパママたちを応援することになるんだろうな、と思っています。
小山:すごく心強いです。共働き未来大学も、まさにそうした学びの場、人生のテーマと向き合う場でありたいと思っていますから。
河本:子育てや仕事が忙しいと、どんな家庭だって夫婦関係がギクシャクすることはありますよね。そんなパパママに対して学びの機会を提供したいなと思って、私も子育て学講座を提供する側に回っています。子育て学は “親と子どもが共に育ちあう” がコンセプト。こういう家族がいい、こういう家族が悪い、ではなく、子どもを基点にパパママが同じ方を向いて考えたり行動できたりする場所を提供したい。何かしら悩んでいるパパママが、子育てを通して “自分たちらしい家族” を創るお手伝いができればいいなと。
小山:本当に、河本さんだから伝えられることはたくさんありますね! 共働き未来大学も気持ちは一緒です。自分たちらしい夫婦や家族の形を考える場所になれればと。ちなみに、最近は特にパパ向けに何かできないかな、と考えているんです。
河本:いいですね。私もパパたちに届けたいことがあって、昨年からパパ限定のパパ講座をやっています。でも、新しいコミュニティに比較的気軽に飛び込めるママ(女性)と違って、パパ(男性)はそういう場所に抵抗がある方が大多数なので、なかなか来ません(笑)。
小山:それ、わかります!
河本:ほとんどの方は、最初は奥さんに連れて来られるんですよ。ママが先に子育て学を学んでいて、「おもしろいから行ってみなよ」みたいな感じで、渋々。実際、講座に来たパパたちに「パパ講座に来るの嫌だったでしょ? 土曜日の朝とか寝てたかったでしょ?」と聞くと、素直に「はい、正直そうですね」と言われるという(笑)。
小山:あはは……。でもまぁ、私も夫に同じようなことを言っているかもしれません(苦笑)。
河本:「行かないとややこしくなるので……」とか、「行くことでママの機嫌が良くなるんだったら……」とか、いらしたパパはそうやって本音を言ってくれます。その場にママはいないので、言いたい放題で(笑)。
小山:あはは。でも、パパだけの空間でそんな風に本音をこぼせるのって、逆に息抜きにもなりそうですね。
河本:それはもう。そもそもパパって、 “ママがどういうことで怒るのか” よく分かってないんですよ。だからママの地雷を踏みまくって怒られる。でも「ママとパパはこういう違いがあるんですよ」ということを整理して伝えると腑に落ちるというか。
小山:なるほど! 女性のCFCに言われるとちょっと共感しづらくても、男性である河本さんに言われると響く部分はたくさんありそうですね。
河本:それはありますね。あとは、パパには仕事に例えて伝えると刺さりますね。「常に受け身で自発的に動かない部下がいたらどう思いますか?」とか。「あっ、それが家での自分なんだ!」と気づき、愕然としたパパの顔といったら(笑)。
小山:そうやってパパのモチベーションを引き上げてくれる人がいるというのは、ママにとっても心強いです。先日、私の息子が通う保育園で『パパさん会』というイベントがありまして。まぁ、パパさん会と言っても、実際は子どもたちのためにプールを設営する労働要員だったんですけれど(笑)。私の夫は少しでもお手伝いができれば……という善意で参加しのですが、そこに「交流したい」という気持ちはなかったようで。でも、帰ってきた彼の表情を見てびっくり。なんだかイキイキしていて「楽しかった!」と。
河本:ママに限らず、パパたちもお互いの情報を共有する場が大事ってことですね。例えそれが強制だとしても(笑)。
小山:パパさん会では男性保育士とのお茶会もあったそうなんですが、どのパパも妻のいないところで本音を吐けたんだろうな、と。
河本:パパは自ら進んでそういう場所には行かないけれど、“変化する余地” はあるんです。機会さえあればね。パパにはそれだけ可能性がある、ということです。